イカルと喜久さん

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キ キー コキー。庭から美声が聞こえる。声の主はイカル。太めの黄色い三角コーンのような大きな口ばしのグレーの鳥。田舎に来てよかったと感じるのはこんな時。

―むす こ ぱぱ かわ くれ た かわ なが きゅ びっく…
オンラインおしゃべり会で花さんが話しているが、音がブツ切れで聞こえづらい。息子?パパ?パパド?川?クレーター?カレー?流れ星?ビッグ?参加者は皆困った顔をして、楽しげに話す花さんとの温度差がじわじわと広がっていく。

花さんが話を終えると、静かに聞いていた司会の喜久さんが穏やかな声で言った。
―そうですか。花さん、息子と川に行ったんですか。パパがつれてってくれたんですね。川の流れが急でびっくりしたんですね。
花さんが頷き、困り顔の参加者の顔が緩んで和やかな空気が戻る。

背中に暖かさを感じて振り向くと、雲間からもれる陽の光にイカルのシルエットが見えた。
キコ キーコ キー
その他
公開:20/09/02 06:41

マーモット( 長野県 )

初投稿は2020/8/17。
SSGで作品を読んだり書いたり読んでもらえたりするのは幸せです。趣味はほっつき歩き&走り(ながらの妄想)。
 

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