秋風

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 草叢を歩くとバッタが跳ねる。ふと気付くと腕にカマキリがしがみ付いていた。子供の頃は掴めたが、なんとなく怖いような気がしてもう掴めそうにない。
 でもなんだか愛しい気分で、カマキリをそのままにして草叢を進んだ。
 カナヘビが草陰から草陰へと走り抜けていく。その先に白骨の猫がいる。肉は無くなっていて、毛が少しだけ地面に残り、時折風になびいている。
 蜜蜂が足に花粉団子を付けて飛んでいく。シジミ蝶は草葉にしがみ付いて風に揺れていた。風に煽られたのかどこからともなくショウリョウバッタが大飛翔を見せてくれた。どこへ行くのやら・・・
 風が強くなってきた。雲は速くないが、日暮れが加速していく。風が涼しい。
 私はピアノ。そろそろ秋を奏でましょう。
 白骨の猫がタクトを振り上げる。私の秋は始まった。
その他
公開:20/09/02 01:31

NfMM

54字に収まらなかったアイデアの捌け口。
あまり人の作品は読みませんので、悪しからず・・・

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