車の墓場

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取引先が廃車の処理を行う、シュレッダー機を設置した。当時はマイカー時代が到来し、大量の新車が市場に出、乗り換え需要もあり、まだ乗れる車は中古車市場に流れ、残りは廃車処理工場に向かった。其の中で傷が少ない車は、バンパー・ドアー等が外され、損傷車の再生部品として使われた。

後は車丸ごとシュレッダー機に投入され、粉砕され排出された塊は途中の磁力選鉱で鉄は分別された。非鉄類はベルコンの上を更に流れ、作業員が手作業で分けた。鉄は製鋼会社で鉄筋に非鉄類はインゴットにリサイクルされた。

ある時自動車メーカーから、処理工場を是非見学したいとの希望があり案内した。廃車が大きなクレーンで挟まれ、シュレッダー機に投入されると見学者全員が目をそむけ見なかった。

ある人は涙ぐんでさえいた。自分達が日夜研究し丁寧に作り上げた愛しい車が、任務は終えたと言え、目の前で破壊されていく姿を見る事は出来ないと言った。
その他
公開:20/09/02 19:19

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