手の平水泳

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手の平を泳ぐ競技がある。コースは手相。
その日、抽選で選ばれた手の平と選手がくじを引きご縁を結ぶことから始まる。
制限時間は5分。個性豊かな手相を前に、どう泳ぐか戦略やセンスが問われる。
というのも、順番を誤るとタイムロスになりかねない。また深く美しく泳ぐことで手相は艶やかでしっかりとしたものになり、それは加点に繋がるからだ。
技を競うだけに収まらず、そのひと掻きが運の強化を手助けできるところが良いなと、いつも思う。

パーン。柏手を合図に選手が一斉に飛び込む。今日はすこぶる調子が良い。
この好レースに、手主の熱気が上がり始めた水温でわかる。
「よし、あとワンターンだ!」と思った矢先、僕は渦巻にのまれ、気づくと申し訳なさそうにギュッと握られていた。
、、、手に汗握る、いい試合にはつきものだ。
見ると奇跡的に僕の指先はゴールについていた。そうか、最後の線は天恵線だったな。すべて神様の手の中。
ファンタジー
公開:20/09/02 14:29

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