母校の話

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 毎夏、学校の美術教室で目撃された日本兵の霊だが、今年はコロナ感染症を嫌ったのか出なかったという。
 もっとも生徒が皆見たと証言するわけではない。見ても言わない、見てないけど見たという、それは思春期だから色々な子らがいるだろう。
 学徒動員という忌まわしい記憶から、公立校でありながら、市立とか公立といった表記をしないその学校の正門表札は、あの時代の教員達のささやかな抵抗、そして祈りでもあった。
 教え子を捧げた教師の無念。終戦が早ければ助かっただろう若者達。日本兵の霊達は、そんな無念に応えて、生徒達の夏の思い出のために出てくれていたのだが、それを知る者が今もいるのかいないのか。
 平和の誓いと兵士の亡霊の関係は一言で表せないが、今夏はコロナによる緊急体制だったので、授業を邪魔したくなかったらしい。
 秋以降はどうするんだろうね・・・
その他
公開:20/09/01 20:27
更新:20/09/02 00:43
学校の怪談

NfMM

54字に収まらなかったアイデアの捌け口。
あまり人の作品は読みませんので、悪しからず・・・

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