琥珀糖

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私は空を閉じ込める仕事をしている。
注文は殺到していて、毎日大忙しだ。
作るのに数日かかるものだし、要望もそれぞれ違う。

さっそく今日も材料を溶かし沸騰させる。糸を引く程度の粘度になったら、ここからが忙しい。
バットに液体を流し入れ、シロップや粉を混ぜていく。

白と青が1:1の水色の上に透明な青を靄をかけるように重ねた。
その絶妙な靄がなんとも言えない雲の濃淡を作る。
表面、部分的にほんの少しの朱とオレンジ。

色を大体入れたら丁度いい時間。
外は夕陽を待ちわびた青空だ。
これから何日間も同じ空模様に当てて乾燥させていくのだ。
私の作った空が、本物の空を覚える。

乾いたら手で朱とオレンジ部分からちぎっていく予定だ。
縁にほんの少し、夕陽が潜むように。

今回のご注文は
『夏と秋の中間地点の夕方』

食べると薄荷ミルクの味がして、アクセントに蜜柑をひとさじ。
お気に召しますように。
ファンタジー
公開:20/08/30 19:41
更新:20/08/30 21:48

雨森れに( 東京 )

色合いの綺麗な物語を紡ぎたい。
シーンごと切り取られた刹那。
不思議、恋愛、ファンタジー、怪談、純猥談などをチラホラと。
中身はお酒が好きなアグレッシブ。

Twitter: https://twitter.com/rainy02forest
note: https://note.com/tettio02
Radiotalk: https://radiotalk.jp/program/61359

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