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倉庫の片づけをしていると鼓が出てきた。
「懐かしい。ここに仕舞っておいたんだ…」
妻が鼓を手にポンポンと鳴らす。
「うん。まだ使えるわね。…隠しておきましょう」
ちょっと待って。使えるのに何で隠すの?
「何でって…これ舌鼓よ」
舌鼓?
「そう。これを叩いている間、食べている料理が美味しく感じるの。思い出してよ。新婚時代、料理が苦手な私はこれを使って貴方に手料理を振舞っていたのよ」
そう言えば、あの時は凄く料理上手だって思っていた…あれって、このおかげだったの?
「そうよ。で、恵がこれを使っておままごとで貴方に泥だんごを食べさせようとして…急いで隠したってわけ」
話を聞いてゾッとした。娘の泥だんごすらも美味しく感じさせるとは…舌鼓…恐るべし!
でも、恵ももう結婚したし大丈夫だろ。
「何言ってるの…孫の華が舌鼓叩きながら泥だんご出してきたらどうするの?」
…そうだな。このまま隠しておこう。
公開:20/08/30 18:50

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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