お山が噴火！？

山田県の山田村では、ある夏、奇妙な兆候が続いた。
地元で一番高い山「山田富士」の付近で、地震が多発し、地鳴りのような音が起きた。
さては噴火の予兆か、と地域では日ごとに警戒を強めた。

ある日の夕方、地の底から響く「ウン！」という声があり、地鳴りと共にズーンと腹に来る振動が起きた。

遂に噴火かと、村の人々は外に飛び出して山を仰いだ。
山田富士の頂上から吹き上がっていたのは、火ではなく「風」だった。
風が勢いよく立ち上がっているのが、上空の雲の動きでわかる。
そして、風の音とともに、微かにブツブツと不平を言う声や、タメ息のような音が、村の人々の耳に届いた。

村の長老は言った。「あれは噴ガスじゃな。」

ウイルス禍や不況で、積もり積もった人々の不満。それを山が「ガス抜き」したというのだ。

この一件以来、村は従来のような、夏の異常な熱波や集中豪雨などの災害が、あまり起きなくなったそうだ。