16
14

会社で好きな人ができたが、「由美は男を見る目がない」とよく言われる私は、彼を本当に好きになっていいのか不安だ。
そこで私は、恋のぼりを買ってきた。
ハートの鱗を持つ、お父さん鯉とお母さん鯉が棒にくくられている鯉のぼりである。
これを飾ると、幸せな恋ができ、ときには鯉が助言をくれるらしい。
今日も、いつものように恋のぼりの前で手を合わせる。
すると、お父さん鯉が初めて喋った。
「あの男はダメだ。だらしない」
焦ったように、お母さん鯉も喋りだす。
『ちょっとお父さん。いいのよ、由美ちゃん。自分が好きになった人を信じて』
「いや、ダメだ。実際、この前食事に行ったときはワイシャツがしわくちゃだったじゃないか」
たしかに。この前の彼はだらしない格好だった。でもなんか可愛げがあって…
どうしよう。もっといろんな意見を…

翌日、私はおじいちゃん鯉とおばあちゃん鯉、子鯉3匹を買ってきて棒にくくりつけた。
恋愛
公開:20/08/31 20:00

日常のソクラテス( 神奈川 )

空想競技コンテスト銅メダル『ピンポンダッシュ選手権』
空想競技コンテスト入賞  『ダメ人間コンテスト』
ベルモニー Presents ショートショートコンテスト入賞 『縁茶』
X (twitter):望月滋斗 (@mochizuki_short)

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容