ごぼう抜き

4
6

音楽室でホルンを吹きながら奏太の心はグランドに飛んでいた。トラックを周回する陸上部員の先頭に志乃が見える。と、志乃がスピートあげてぐんぐん差を広げ部員たちを次々と抜き去った。

志乃に近づきたくて青森にきた奏太は、畑一面に広がる鮮やかな緑の葉に驚いた。スーパーのごぼうと全然違う。
「ごぼう抜き」は100メートルの畑をごぼうを抜き抜き進む競技。力自慢の奏太はこの競技なら勝負できると意気込んでいた。が、始まってみると強者揃い。リズムよくごぼうを抜いても前方にはまだ沢山の選手が見えた。

―恋ってのは、それはもう、ため息と涙でできたものですよ。

落胆した奏太がつぶやくと、ごぼうがざわざわ動き出した。
それは「お気に召すまま」だな。君、恋してるの?僕ら演劇には詳しいんだ。大根とは違ってごぼうは名役者揃いさ。

すきあり!

土との間に隙間ができて抜きやすくなったごぼうに奏太はスパートをかけた。
青春
公開:20/08/31 14:48
更新:20/09/05 19:08

マーモット( 長野県 )

初投稿は2020/8/17。
SSGで作品を読んだり書いたり読んでもらえたりするのは幸せです。趣味はほっつき歩き&走り(ながらの妄想)。
 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容