黄色いカラス

俺は公園でカラスを待っていた。カラスと久しぶりにビールを飲む約束だ。黒い服ばかり着ているのでみんなカラスと呼んでいた旧友である。
周りは家族連れやカップルで楽しくざわめく。テラスでビールを飲んでいると、黄色いツナギを着た男が近づいてきた。信じられなかったが顔を見て納得した。カラスだった。「どうしたんだ」と言った「これ？ずっと黄色を着ているんだ」「昔は黒だったじゃないか」「大きな声では言えないが戦争に行っていたんだ」「何の戦争？」「極秘情報だから言えない。特殊部隊の宿舎にいる」「何処の宿舎？」「それも言えない。山奥の静かなところだ」
二人で喋った。昔の仲間のこと、俺の仕事のこと。カラスの近況は避けた。ビールを数杯飲むと日が傾いた。
「それじゃ」「またな」俺たちは別れた。色こそ黄色だが後ろ姿は昔のカラスだ。俺は一人でもう一杯飲んだ。日が暮れた。カラスは山に帰ったのだ。