ワンダーフォーゲル

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誰よりも早く“幸せ”を届けたい…。
そんな思いを胸に羽ばたこうとしている赤い嘴の八羽…。
鳥として…そう幸せを運ぶ鳥として、あの人達の元へといざ行かん!
さあ、各自スタートラインに並び終え、まさに今その瞬間を迎えようとしています!
最初に海を越え、異国の地に辿り着くのは誰だ!
届けろ!その白と黒の翼で……。

「おかしな夢だったな…渡り鳥のレースなんて…」
まだ眠い目を擦りながら、郵便受けの取り出し口を開ける。
入っていたのは、欧州のある国で暮らす、かつての教え子からのエアメールだった。
貼られた切手に描かれているのは一羽のシュバシコウ。たしか欧州では“幸福を運ぶ鳥”と云われ、それがこの国では本種のコウノトリとして……。
「というか、夢に出てきた八羽と同じ鳥だ…」

封を切ると、中には便箋の他に一枚の写真が入っていた。
そしてそこには、白い産着の赤子を抱いて笑顔を見せる彼女の姿があった。
ファンタジー
公開:20/08/31 01:31
更新:20/08/31 20:39
空想競技

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