思い出す夏

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どうしても絵筆がヨコシマな考えを表してしまう。
先日初めて彼と口付けをした。
あぁこんなものか、と思った。
手を繋ぐとかそういう事とあまり変わらない。
感触と感覚の確認作業だった。

心地いい風がスケッチブックを捲ろうとしてくる。ついでに私の髪も。
空はペンキ塗りたてのような水色。
モコモコとした入道雲が育っていた。
プールの水面の輝きが天井でゆらめいている。

『キス、したいなぁ…』

そう、ずっと頭の中にヨコシマな考えがあるのだ。
人物を描けば彼に似ている気がするし、果物や花なんかも口唇を意識してしまう。
気にしすぎなぐらいに気になってしまって絵どころではない。

なぜあんな顔を近づけるだけの行為がこんなに魅力的なのか、私にはわからない。
私はカーテンにくるまって、赤くなった顔を隠す。
お日様の匂いがした。
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公開:20/08/29 22:56

雨森れに( 東京 )

色合いの綺麗な物語を紡ぎたい。
シーンごと切り取られた刹那。
不思議、恋愛、ファンタジー、怪談、純猥談などをチラホラと。
中身はお酒が好きなアグレッシブ。

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