夏の神様

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今年はあんまり可哀想だと、夏の神様は嘆いておられました。それで、何か夏らしいことをしてやろうじゃないかとそうおっしゃるのです。

真夜中、天の国の台所には大きな鍋がいくつも用意されました。
「さあ、皆どんどん茹でるんじゃ」
天の国はもくもくと白い湯気で満たされ、あっちこっちに白い山ができました。けれど誰一人、神様が何をなさろうとしているのか分からないのです。

「まあいいから見ていなさい」
神様はそうおっしゃると、水道局の局長を呼出して何やらひそひそと内緒の会議を始めました。

次の日、下界では困ったことが起きました。
流れてくるのです。家の水道から、じゃんじゃんじゃんじゃん、水ではなくてそうめんが。

人々は思わず顔を見合わせました。
「え、なにこれ」と戸惑い顔で。

けれども神様にはそんな表情までは見えません。我ながら実に素晴らしいことをしたと、そう大そうお喜びになったということです。
ファンタジー
公開:20/08/29 20:08
更新:20/08/29 21:03

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