3000メートルスーツケース走

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号砲とともに選手が一斉にスタート。ガラガラ、ゴロゴロと空気を引き裂く大きな音。色とりどりのスーツケースに声援が高まる。スピードが高まったところで選手はスーツケースに飛びのってゆく。お気に入りのスーツケースを持って走るこのレース。中に入れるもの、押したり引いたりのったりは自由。
ポツポツと肌に何かがあたる。雨だ。トラックがキラキラ光りだす。ドドドン、ウワァー、キュキュ。滑ってまっすぐ進まないスーツケースに混乱する選手達。とその時、ギャー!という叫び声とともに爽やかな香りが漂う。レモンスカッシュのペットボトルの蓋を持って茫然とする選手。振動で爆発した模様。
完璧に練習した僕はゴールで待つ彼女の元に一番乗り。はやる気持ちを抑えつつ僕は今まで閉めていたスーツケースをゆっくり開けてこう言った。
―新婚旅行はどこにしようか。僕となら乗り遅れないよ!
真っ赤な大きなバラの花束に、彼女の顔が華やいだ。
青春
公開:20/08/29 18:39
更新:20/09/05 04:50

マーモット( 長野県 )

初投稿は2020/8/17。
SSGで作品を読んだり書いたり読んでもらえたりするのは幸せです。趣味はほっつき歩き&走り(ながらの妄想)。
 

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