混合ダブルス

玲香のボレー炸裂！優勝！歓喜の抱擁……のはずが、宙をさまよう私の両腕。それを見て笑う玲香。

喜びで一瞬忘れていた……彼女が幽霊であることを。

人間と幽霊との混合ダブルス。テニス経験者で霊感の強い私にはうってつけの競技だった。

玲香との出会いは三年前。高校の部活帰りに事故に遭い成仏できずにいた。混合ダブルスのことを話すと目の色が変わった。私も強い念は送るものの、幽霊がラケットを扱うには大変な力を要する。それにも慣れ、ついに今日、世界を制した。

「ありがとう、あの、私……」

控室でメダル片手に玲香が言う。傍目にはメダルが浮いているだけだが。

「人間として、もう一度テニスがやりたいんだろ？」

聞かなくても、わかっていた。

「こちらこそ、今までありがとうな。また、いつかどこかで」
「うん……絶対！絶対だよ！」

泣き笑いの玲香がゆっくりと消えていく……メダルよりも眩い光に包まれて。