切れかかった帽子

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父は野球が大好きだった。
週末は少年野球のコーチをし、野球観戦も大好き。
高校球児だった。
父は徹底した野球馬鹿だ。
私の指導には特に厳しかった。
星一徹のような、スパルタまでにはいかないがそれに近かった。

父は勇敢で愛があった。
私は大好きだった。
「長嶋茂雄のようなスターになりたかった。」父は言っていた。
「勇気ある長嶋さんのプレーが大好きだ。」
勇気ある男。なんでもチャレンジしていく男。
そんな男に憧れていた。
父は消防士になった。
勇気ある行動が人を救い、又、その人の家族の心を救い、消防の世界のスターになるのだと父は生前言っていた。

もう父はいない。
大火事の中の少女の生命を救い、父はスターになった。
つばの部分が切れかかった野球帽は実家の仏壇に写真とともに飾られている。

私は今シーズン、新人王を狙う。
その他
公開:20/06/20 11:25

ポエマータカノ( 横浜 )

愛を言葉で伝える事が使命だと感じている。
42歳のおじさんです。
カラオケ、料理、笑わすこと、読書、哲学、物思いにふけること大好きです。

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