真夜中のコンビニ

真夜中のコンビニに幸運がやって来た。
あの有名映画監督が映画「コンビニ家族」の撮影のために店を使わせてほしいと店長の私に交渉に来たのだ。
勿論、答えはイエス。
このコンビニで撮影が行われたとなれば、噂が噂を呼び、お客は倍増。売り上げも鰻上り間違いなし。
だから、私はお客が押し寄せる事を見越して仕入れを通常の三倍にした。これが上手く行けば、私は本部から引き抜きのお誘いが来るかもしれない。私は笑いが止まらなかった。

だが、私の計画は脆くも砕け散った。
私は幸運の尾を掴み損ねたのだ。
映画撮影が開始してからすぐ後にライバル店が出店して来たからだ。
それからが悲惨だった。売り上げは一向に伸びず、在庫は倉庫に山積み。在庫商品が売れないから新たな商品を仕入れるお金が無い。悪循環だった。
さらには、突然、国税局の査察が来て脱税分のお金を徴収して行った。
ああ、幸運な事は不幸だ。幸運は人を駄目にする。