塩子力発電所

僕ら年長組は幼稚園の遠足で塩子力発電所を見学する事になった。
塩子力発電所はまるで悪の手先が作った要塞のような建物だった。
広いロビーに年長のクラスの全員が集まると、突然部屋が真っ暗になった。
「お前達は一生奴隷として働かされるのだ。もう家には帰れないよ」
誰かが泣き出した。連鎖するように他の子も泣き始めた。
すると、天井から何千本もの触手が現れ、僕らの涙を吸い取り始めた。
「嘘でした。ありがとう。この施設は子供の涙の塩分から電気を作っています。
ちゃんと家に帰れますよ。でも、もしこの事を家族に言ってしまったら」
照明がついて、ロビーから発電所の内部が見えるようになった。
大きなガラス管に一人ずつ密閉された園児達がいて、大声で泣いていた。
「この施設はもう一つの呼び方があります。それは」
僕は怖くなって走り出した。
しかし一瞬にして何千本もの触手に捕まった。

僕は、帰れないそうだ。