きゃべつの女

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深夜の宿場町。地蔵堂のろうそくが右と左に2、3度揺れて、それで消えた。ぬるい風が吹いている。
かつては街道沿いに赤提灯の店が3つ4つあったけれど、今は自動販売機のあかりが4つ5つ灯るだけ。
私は25、6のときに忍者に憧れてこの町にやってきた。
この町の忍者はすでに生き方ではなく商売で、それをなぜか公務員が請け負っていて、公務員試験に興味のない私は公式の忍者を諦め、夜な夜な自分が思う忍者活動に打ちこむことにした。
その日は街道の陣屋に己を重ねていた。泥で汚した麻布で私はただの壁になる。
若い女が私の壁に立小便をした。
信じられないことが起きても私は忍者。動じない。
「回鍋肉が食べたい」
女は小便をしながらそんなことを呟いた。都会の女だと思った。
その後その女とは心療内科で6、7回は会った。
「きゃべつには別れが隠れてるの」
ふたりできゃべつを剥きながら接吻は7、8回。
彼女の芯は甘く消えた。
公開:20/06/19 11:50

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