まだ一周目の途中。
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「かなり低いそうよ」
翌日に手術を控えた私は、病室で彼との時間を過ごしていた。彼とは付き合い始めて長い。
「大丈夫、大丈夫」
いつもお気楽な彼の口調は軽い。でも私が患った病気は成功率が本当に低い厄介なものだ。私は諦めにも似た深い溜め息を吐き出した。
ポン、と私の頭に彼が手を乗せた。あたたかい手のひらから懐かしい映像の数々が甦る。
「今、走馬灯が見えちゃった」
「そんなに速かった?」
映像はとてもゆっくりだった。私は静かに首を振る。
「じゃあ、走馬灯じゃないね。観覧車さ」
観覧車。記念日には必ず二人で乗る私たちの大切な場所。
「まだ一周も終わってないよ。俺、二周、三周とするつもりだから」
私は自然と涙が溢れ出た。彼がその涙を指で拭う。そのまま私の頬を手のひらで包み込んだ。そして少し傾けた彼の顔が私に迫り……。
「成功したら、結婚しよう」
きっと手術は成功する。だってまだ一周目の途中だもんね。
翌日に手術を控えた私は、病室で彼との時間を過ごしていた。彼とは付き合い始めて長い。
「大丈夫、大丈夫」
いつもお気楽な彼の口調は軽い。でも私が患った病気は成功率が本当に低い厄介なものだ。私は諦めにも似た深い溜め息を吐き出した。
ポン、と私の頭に彼が手を乗せた。あたたかい手のひらから懐かしい映像の数々が甦る。
「今、走馬灯が見えちゃった」
「そんなに速かった?」
映像はとてもゆっくりだった。私は静かに首を振る。
「じゃあ、走馬灯じゃないね。観覧車さ」
観覧車。記念日には必ず二人で乗る私たちの大切な場所。
「まだ一周も終わってないよ。俺、二周、三周とするつもりだから」
私は自然と涙が溢れ出た。彼がその涙を指で拭う。そのまま私の頬を手のひらで包み込んだ。そして少し傾けた彼の顔が私に迫り……。
「成功したら、結婚しよう」
きっと手術は成功する。だってまだ一周目の途中だもんね。
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公開:20/06/18 23:55
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壬生乃サル(MiBU NO SARU)
Twitter(@saru_of_32)
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