魔法の目覚まし時計

その目覚まし時計を購入した決め手は
「あなたの予想を上回る奇跡の起こし方を致します。」
具体的な説明は一切書かれていなかった。
「まさに魔法」なんていうシールもわざわざ貼り付けてあった。
普通ならそんな怪しい商品は買うわけないのだが
普通ではなかった。明日のプレゼンには社の命運が掛かっている。
朝にめっぽう弱く藁にもすがる思いで購入した。

開封したその姿は至ってよくあるソレであった。
丸い本体の上にベルが2つ付いている。目覚まし時計をキャラ化する際に決まって使用される形だ。
本体や説明書を見る限り特別な何かを感じることが出来なかった。
半ば体よく在庫処分を掴まされたかと自嘲気味にアラームをセットして床についた。
でもその奇跡を期待している自分もいた。


最悪だ。
音どころか何も起きない欠陥品だった。
設定時刻になってもピクリともしないのをしっかり見届けた。