ティ・ノエル1

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ティ・ノエルは奴隷だった。公式には奴隷は存在しないことになっているが、そんな世界はこの世の王国にしか存在しない。
ティ・ノエルが海岸線が宝石のように美しい島国で、サトウキビを圧搾機にかける仕事に従事していた。ところが、ある日、彼の左手が圧搾機に巻き込まれ、片腕を失ってしまった。
ティ・ノエルは農園をお払い箱となり、生活のために大道芸を始めた。
彼は観客を前にして言う。
「片手で拍手をするところを見てみないか」
観客が首を縦に振ると、ノエルは観客のほほを右腕で打ち付けた。これが彼のいう「片手の拍手」だ。
不思議なことに、彼の平手打ちは評判となり、いつしか、「ノエルに叩かれると幸せになる」との伝説まで生まれた。
ティ・ノエルはいまも太陽が間近に見える島国のどこかの街角に立ち、だれかのほほを叩き続けている。
ティ・ノエルが幸せなのかどうかは、だれも知らない。
ファンタジー
公開:20/06/19 22:11

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