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空っぽになった紙箱を握り潰した。
「なんで来んだよ」
緑の傘の向こう、グレイのパンツスーツと黒い靴。
さすがに入って来ない。当たり前だろ、意味もなく溜息を殺した。
「謝るべきだと思ったから。……昨日はごめんなさい」
なんであんたが謝る。訊き返さない意地はあった。切った唇が攣れて痛んだ。
来なきゃいいのは俺の方だ。見付かると解ってて動かない、見付けてほしい隠れんぼみたいに。
「お母様の事、当て擦るつもりじゃなかったのよ」
掻き分けようとした手が止まった。
――なるほどそういう事。
すこんとネジが飛んだ。笑えて笑えて仕方なかった。
中学の時、お袋が家を出てった。今の母親は後妻で、折り合いは正直悪い。俺がこうなった原因ってわけじゃない、そんなものに左右されるもんか、俺は俺だ。
ステレオタイプな同情。教師の使命感。押し付けがましい大人の理屈に、山尾も填まってるだけだった。
笑い過ぎて涙が出て来た。
「なんで来んだよ」
緑の傘の向こう、グレイのパンツスーツと黒い靴。
さすがに入って来ない。当たり前だろ、意味もなく溜息を殺した。
「謝るべきだと思ったから。……昨日はごめんなさい」
なんであんたが謝る。訊き返さない意地はあった。切った唇が攣れて痛んだ。
来なきゃいいのは俺の方だ。見付かると解ってて動かない、見付けてほしい隠れんぼみたいに。
「お母様の事、当て擦るつもりじゃなかったのよ」
掻き分けようとした手が止まった。
――なるほどそういう事。
すこんとネジが飛んだ。笑えて笑えて仕方なかった。
中学の時、お袋が家を出てった。今の母親は後妻で、折り合いは正直悪い。俺がこうなった原因ってわけじゃない、そんなものに左右されるもんか、俺は俺だ。
ステレオタイプな同情。教師の使命感。押し付けがましい大人の理屈に、山尾も填まってるだけだった。
笑い過ぎて涙が出て来た。
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公開:20/06/18 12:30
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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