酔篝(よいかがり)-3

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生徒指導室の窓からも馬酔木は見えた。
ぱらぱら散った白い花。避けるみたいにカーテンを引いた。薄暗い視界は花の下と似てる気がした。
馬も鹿も食わない馬酔木の花――いちいち気にするな、文字通りの馬鹿だ。
「来ないかと思ったわ」
テストを抱えた山尾がドアを閉めた。
「今日は吸わないの?灰皿あるけど」
またこれだ。俺を怒らせたいとしか思えない。
「あしびきの山鳥の尾のしだり尾の」
「意味が違う。鹿野君なら知ってるでしょう」
百人一首、柿本人麻呂の歌。『あしびきの』は馬酔木じゃない。知ってるけど、理解者面で機嫌取りたがる奴は嫌いだ。
「幼稚な真似はやめなさい。君が困るだけよ」
困ってんのはあんただろ。中間テスト、古文だけ0点。さぞ肩身の狭い事で。
「授業がつまんねぇんだよ」
「出席してないでしょう」
「聞かなくても判る。……もっと別のがいい」
冗談のつもりだった。
「いいわよ」
山尾が眼鏡を外した。
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公開:20/06/18 09:30

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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