コンビニ屋台

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チリ〜ン
夜中、私はその音で目を覚ました。
先日高校で友人から聞いた、深夜に欲しい物が何でも揃うコンビニみたいな屋台がある、という噂を思い出す。
私は財布だけを握り締め飛び出した。
そこには何の変哲もない屋台があった。
店主はどこにでもいそうな男性だったが顔からは何の感情も見えない。
「子供がこんな時間に出歩いちゃダメだろ。」
そう言いながらも、売ってはくれるみたいだ。
品物を選びつつ、噂を確かめる。
「欲しい物が置いてるって聞いたんですが…」
言い淀んでいると、店主は足下から一つの箱を取り出した。
中には昔失くした人形が入っていた。
「なぜこれを!」
「さて、ねぇ。」
「ありがとう…でも、お金だけじゃ…何か他に渡せる物があれば…」
「いらんよ。ただ、俺は人の笑顔が見たいのさ。だから、笑ってくれればそれでいい。」
もう一度頭を下げた私は、多分今までで一番の笑顔だっただろう。
その他
公開:20/06/18 05:51
更新:20/06/18 05:52

ハル・レグローブ( 福岡市 )

趣味で昔から物書きをのんびりやってます。
過去に書いたもの、新しく紡ぐ言葉、沢山の言の葉を残していければと思います。
音泉で配信されているインターネットラジオ「月の音色 」の大ファンです。

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