異常な通常

新型ウイルスの流行は戦争のようだった。人々は次々と感染し世界経済は崩壊した。ちょっと前では信じられないが僕の職場があった新宿にも人は誰もいなかった。あんなに鬱陶しかった人混みや喧騒が今では懐かしい。

変異を繰り返すウイルスに人類は為す術がなく倒れていった。今感染者や死者数が何名なのか一切報道がない。テレビは放送時間を大幅に短縮して夜９時には終わり、ラジオも１１時には終わった。

しかし僕の生活は変わらない。仕事が激務なのは相変わらずだし、出勤時間は早朝でいつも誰もいない。世間のニュースが全く現実味がなく、僕だけが世界から取り残されているようだ。当事者意識の欠如、しかしそれを感じるにはあまりに僕の生活に変化がなかった。もともと友達もいない、１人暮らで外食もしない。異常な状態に一番通常なのは僕だった。

でも通常にも飽きてきた、そろそろ僕を異常に戻してくれ世界。朝５時会社にて。