冷蔵庫のゼリー

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「冷蔵庫にゼリーがあるから、食べなさい」
 そのゼリーは、いま私が持ってきて見せて冷蔵庫にしまったものだ。
「スプーンはここにあるから」
 そのスプーンも私がいまそこに置いたものだ。
「ああ。あとでもらうよ」
 私は微笑みながら申し出を丁寧に辞退する。
 むかしに比べれば、医療技術は進み、発展し、よい薬も出来ただろうけれど、立場は変わったはずなのに私はこの母親の息子であることはどれほど時間が経っても全く変わらない。
「また来るよ」
「気をつけて帰りなさい」
 いつ見舞いに来ても、いたわられるのは常に私のほうで、そして彼女に同じように「体の調子はどう?」と聞くと、自身はいつでも「へいき、へいき、だいじょうぶ」と返事をしてくる。そのことが、「へいきでも、だいじょうぶでもない」ことを教えてくれる。いつまで、あと何回、こうして話せるだろうか。この夏は乗り越えられるだろうか。
暑さがこたえる。
その他
公開:20/06/17 06:06

N(えぬ)( 横浜市 )

読んでいただきありがとうございます。(・ω・)/
ここに投稿する以外にも、自分のブログに同時掲載しているときがあります。

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