真夜中のコンビニ

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私の目の前にはコンビニがある。
いや、あったと言った方が正確だろう。
このコンビニは昨日を持って閉店したのだから。
それなのに私はまたここに来てしまった。
もしかしたら閉店すると言うのは何かの間違いだったんじゃないか、そう思って。
しかし、私のそんな考えはすぐに打ち消された。
入口のガラス戸に閉店を知らせる紙が貼ってあったのだ。
「ははっ、そうだよね。私、分かっていた、分かっていたよ。私自身が事実を認めたくないだけ。馬鹿だな、私。こんなところまで来て」
私は店員としてここで働いて来た数年間を思い出した。
「あんなことや、こんなこと、色々あったけど楽しかったな。でも、もうないのか。淋しいな」
その感情は恋人と決別する時によく似ていた。私は最後のお別れにもう一度だけ振り返った。
そこには昨日まであんなに神々しく輝いていた命の箱の灯はもう消えていた。
そうだ、このコンビニは昨日、死んだのだ。
公開:20/06/18 00:32

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