モノノケ

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部屋を訪ねると、教授は棚の『何か』の剥製を悦に入った様子で眺めていた。

「新種ですか? 奇形ですか?」

夜鷹の目、木菟の耳、人の口、口からは鮫の様な歯が覗いている。大きさは梟程。

「ああ、うん。なぁに知り合いに作らせた偽物だよ」

教授は、こちらを振り返りもせずにうっとりと言う。

「僕はね、もうすぐ魂をこれに移すんだ」

教授という人種は変人しかいない。まともに取り合っていたらきりがない。

愛想笑いをしてお茶を濁した数日後、教授が首を吊った。

葬儀も済んで四十九日も経つ頃、教授の部屋を片付けに訪れたが、あの『何か』が無かった。
ご家族が形見にでも持ち帰ったのだろうと勝手に納得した。

その日の帰り、夜道でふと名を呼ばれた気がして振り返った。
それは、確かに教授の声だった。
だが、そこに教授が居るわけもなく。

ただ、梟大の『何か』が此方をジッと見てから、闇夜に飛び去って逝った。
ホラー
公開:20/06/17 23:56

右左上左右右

アイコンは壬生野サルさんに描いて頂きました。ありがたや、ありがたや。

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