酔篝(よいかがり)-2

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「せめて見付からない場所で吸えば?」
ひっつめ髪が横から覗く。煙が飛んで、甘い匂いが濃くなった。
「チクるか止めるかしねぇのかよ」
幹から背中を上げて、残ったタバコを踏み消した。
緑の傘に入り込んだ、山尾の眼鏡が曇る。外すかと思ったけど指で拭った。雨降りの翌日、地面は寝転がるには冷たい。
「毒があるって言ったのに」
「食わなきゃ平気だろ」
馬酔木――アセビまたはアシビ。馬が食うと酔っ払ったみたいになる。鹿が嫌うから、シカクワズの別名もある。
「調べたの?思ったより素直ね、鹿野君」
おかしそうな声。細い手が触った枝から花が散る。白い花はぼんやり光って、並んだ格好が提灯にも似てる。夏祭り、櫓の下の盆踊り。買ってもらえなかった夜店の綿菓子。
「万葉集にも、馬酔木の歌があるわ」
花提灯を撥ねて山尾ごと置き去りにした。
結局こいつは、俺を授業に引っ張り出したいだけだ。絶対その手には乗らないと思った。
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公開:20/06/17 23:27

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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