手のひら観覧車

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気になっていた先輩が交通事故で亡くなってしまった。
もしも何かあったときは自分のそれを臓器移植に使ってほしいと、よく家族に話していたらしい。どんな用意周到な高校生だよ、とツッコミたいのに、その相手がいないのが寂しい。
残っていて、かつ移植に使えそうだったのは彼の目の網膜だった。それだけ。
目なんて、言ってしまえば手のひらに収まってしまうほどの大きさだ。ずいぶん小さくなってしまいましたねえ、と心の中で呟いたのは私の強がりだった。

その頃私は左目がとある病気のせいで見えなくなっていた。何の因果か、先輩の網膜を私が貰うことに。
手術は成功。目が見えるようになった。彼が一緒に居るような気がしてうれしくもある。
そんな彼の網膜にふとした瞬間に映る景色がある。
私が無理を言って一緒に行った遊園地。二人で乗った観覧車。
嫌々来ていたはずの彼が、私をずっと見てくれていた。
……まずいまた泣きそうになる。
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公開:20/06/16 07:00
スク― 手のひら観覧車

たけなが


たくさん物語が作れるよう、精進します。
よろしくお願いします!

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