一風変わった鏡

一風変わった鏡がある。

その前に立つと、ある人は実際より小さく、またある人は大きく映る。同じ人でも、その時々で大きくなったり小さくなったり。

スランプに悩む野球少年がいた。いくら練習しても打てない。一風変わった鏡に彼は小さく映った。

「僕、ちっぽけな人間だな……」

少年は、さらに落ち込んだ。

スランプに悩むサッカー少年がいた。いくら練習してもシュートが決まらない。彼も鏡に小さく映った。

隣にいた父が言った。

「思いっきりジャンプしようとする前、人は必ずしゃがむ。それと同じさ。もう少し練習すれば、お前は一気にサッカーが上手くなる。いまは、その前にしゃがんで力を貯めている段階なんだよ」

へぇー、そんな考え方もできるんだ。少年は気を持ち直した。

一風変わった鏡に映る人の大小には、その時々の心象が投影される。

その後は人次第。父の言葉に勇気をもらい、サッカー少年は大きくなった。