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長きに渡り繰り返された戦争。無意味な戦いが理由もない殺戮を生み、気がつけば私は世界最後の一人となっていた。
存在感の薄さ。それが私の取り柄だった。
研究室に閉じ籠り、外の出来事など我関せずと言わんばかりに実験を繰り返していた。
その結果がこれだ。もう数十年、人の声を聞いていない。私自身、声帯が衰え声も出せない状態だ。
空耳でもいい!人の声が聞きたい!
そんな願いから、私は人を作り出す研究を始めた。
この荒れ果てた大地でも生きられる体を与えた。学ぶ為の知恵を与えた。持てる限りの全てを費やしたそれは失敗に終わった。
研究過程で生み出されたそれは姿形は人と同じだ。
しかし知能は獣と同レベル。己の強さを誇示し、弱者を叩く。争いから何も学んでいない…
それらは私を神と呼んだ。私が神などおこがましい…そして、それが人と名乗るもおこがましい。
だから私はそれに人と獣の間という意味で「人間」と名付けた。
SF
公開:20/06/16 18:51

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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