カラスアゲハとTシャツ
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「黒って、やっぱ熱ぃのかな」
ナツキが言い出して、信号目掛けて走ってった。
「待ってよ、ナツ!」
追っ掛けようとして、赤。ナツキは向こうにいて、ダンプカーがぶぉっと風をまいた。
多分理科の話。天気予報、今日は30℃超えだっけ。――白。銀。信号変わらない。赤。赤。白黒――あ、パトカー。前のめりが真っ直ぐになったとこで、青。ランドセルがゴトゴト言った。
ムシトリナデシコの花を、ナツキが両手で囲いながら、口で『シッ』て言った。黒い羽がぱたぱたした。
「……あちっ!」
途中でナツキがよろけた。カラスアゲハがひらひら舞った。
「黒って、ほんとに日光吸収すんだな」
「そんな熱い?」
「ほら、手ぇコゲた」
りん粉をTシャツで拭いて、ナツキが笑った。
「コンビニでアイス食おうぜ、ミフユ」
「うん!」
指はまだ黒くてキラキラして、ちょっと熱かった。
白いTシャツに吹く風は、ソフトクリームの温度だと思った。
ナツキが言い出して、信号目掛けて走ってった。
「待ってよ、ナツ!」
追っ掛けようとして、赤。ナツキは向こうにいて、ダンプカーがぶぉっと風をまいた。
多分理科の話。天気予報、今日は30℃超えだっけ。――白。銀。信号変わらない。赤。赤。白黒――あ、パトカー。前のめりが真っ直ぐになったとこで、青。ランドセルがゴトゴト言った。
ムシトリナデシコの花を、ナツキが両手で囲いながら、口で『シッ』て言った。黒い羽がぱたぱたした。
「……あちっ!」
途中でナツキがよろけた。カラスアゲハがひらひら舞った。
「黒って、ほんとに日光吸収すんだな」
「そんな熱い?」
「ほら、手ぇコゲた」
りん粉をTシャツで拭いて、ナツキが笑った。
「コンビニでアイス食おうぜ、ミフユ」
「うん!」
指はまだ黒くてキラキラして、ちょっと熱かった。
白いTシャツに吹く風は、ソフトクリームの温度だと思った。
青春
公開:20/06/16 17:51
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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