墜ちてきた者

　他の星からの宇宙船と思われるものが地球に落下した。着陸したのではない。それは、地球の地上に軟着陸して、煙を吐き、一部はひしゃげていた。中からは、人間に似た形態の地球外生命体が数体発見された。彼らはケガをしていた。すぐにも彼らは研究され治療も試された。数体は生き残り、数体はあえなく死んだ。
　彼らは研究の対象になった。保護された。だが「自由」はなかった。やがて世界の人々はいろいろな意見を言った。意見は、おおむね二つ「生活に制限を加える保護派」と「完全な解放派」だった。地球の代表者達の話し合いの末「解放」が決定された。彼らは即日「解放」された。だが彼らに「地球で生きていくすべ」はなかった。しばらくして一人、そしてまた一人。彼らは死んでいった。人々は「やはり保護しておくべきだった。結局殺したのと同じだ」と言った。
　だが、彼らは殺されたのではない、自らの生を全うしたのだ。