ハゲタカ

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薄曇りの空の下、少し蒸し暑い空気の中、ゆっくりと土手を歩く。
川べりに続く斜面には雑草が鬱蒼と茂っている。

離れたところで主婦たちの笑い声と、子どもたちを呼ぶ声が聞こえる。


今の生活に不満はない。
将来性のある仕事と、それに見合った報酬。
夫は優しく、お互いを尊重しあえる関係だ。
ただ、結婚して5年になるのに、まだ子供ができないでいる。
きちんとした検査を受け、治療を受けるべきだろうか。

ベンチに座って対岸を眺めると、大きく胡乱な野鳥が映った。
細長い灰色の首をもたげ、薄汚れたような黒柿色の翼を広げながら、こちらを見ているようだ。

木立ちは裏葉色になり、雨が来そうな気配がする。
西風が突然吹き、私の体を通り過ぎ、木々を畝らす。
するとその大きな鳥は風に乗り、曇天に舞い上がと、すぐに消えてしまった。

私は子宮にほんのりとした暖かさを感じながら、帰路へ向かった。
その他
公開:20/06/14 22:23
風が吹くとハゲタカは子を宿す ヨーロッパの伝承 ヴァージンメリーのシンボル

まくの沙江

自分なりのショートショートができればいいと、投稿させてもらっています。
皆様の作品やコメントは、新しいアイディアが生まれて勉強になります!

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