無人販売中

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無人販売中。
真っ赤な立て看板には、お金はここから入れてくださいと書いてあるようだ。

それなのにだ。
男は、そこに何も置かれてないことに苛立った。以前はとれたての野菜や卵なんかが無人で売られていたのだろう。

男は、ひどく腹が減っていた。ぜんぶ、むさぼり食う予定だった。

くそっ、金なんか入ってるわけないよな。
男はいらいらとくうふくで、目がくらくらしていたが、まさかお金を入れるその小さなすきまに自分の指がするすると入っていくとは思わなかった。

そんなわけあるもんか。いらいらとくうふくのせいだ。こんな小さな穴に、男のごつごつした手が入るわけないのだ。

しかし、無人販売所はもっと鮮やかな赤い色へと変わっていく。男の手が腕まで吸い込まれていったころ、男はもういらいらもくうふくも感じることはなかった。

無人販売中。
小さなお金の穴から、そいつは今日も通りをのぞいている。
ホラー
公開:20/06/15 16:06

きろひの、えう

ぼそぼそと創作話を書いています。

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