願い

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祖父が死んだ。
祖父は、戦後一代で財を成した。
人格者だったようで、葬式にはたくさんの人がきた。

私は、正直いって祖父のことをよく知らない。
バイタリティに溢れていつも忙しそうにし、そして、笑顔だった。
やりたいことはやり尽くした。
そんな人生だっただろう。

祖父が羨ましい。
私は、そのように生きることができるだろうか。
私は今、二十歳だ。
やりたいことはなんだろうか。何も決まっていない。
二十歳の頃の祖父はどうだったのだろう。

祖父のことを知りたくなった。祖父を知れば、自分の中の何かが見つかるような、そんな気がした。

祖父の書斎へ入った。
本の匂いがする。適当に手にとる。さっぱりわからない。

「いきたい」

急に声が聞こえた。

驚いて顔を上げると、そこには九官鳥がいた。
祖父が飼っていたのだ。

「いきたい」

私は、そう思えるだろうか。
その他
公開:20/06/15 01:12

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