サドル泥棒

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ある小さな町で、いつの頃からか小さな事件が連続していた。駅近くの駐車場から、自転車のサドルが盗まれる、というものだった。
あまりに小さな事件だったので、被害者たちが声を上げることはなかった。

ある日、ある青年が初めてサドルを盗まれる被害に遭った。噂には聞いていたが、自分には無縁と思い油断していた。だが、ついに自分も狙われてしまったか。
青年が油断していたのも無理はなかった。しょっちゅうサドルが盗まれるという割に、いま駐車場に停めてある自転車にはどれもサドルがついている。被害に遭わなければ、他人事でしかなかった。
さて、現実にサドルを盗まれてしまった。このサドルのない自転車をどうしたものか。そう考えを巡らしたあたりで青年をはじめ被害者たちは皆、事件の真相に気付くのである。

青年は辺りを見回し誰もいないことを確認した。そして、隣に停めてある自転車のサドルのネジを急いでゆるめ始めた。
その他
公開:20/06/14 23:33

ゆるき

面白かった、と読後に思っていただけるようなお話を目指していきます。

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