Fの神様 1

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営業先に向かう途中。いきなり老人に声をかけられた。
「お前にF1を授ける。」
てっきり道でも聞かれるのかと思った。
適当にあしらって先を急いだ。

苦手な担当者にクレームで呼ばれて気が重かった。
今日はどんな無理難題を吹っかけられるだろう。
胃が引っ張られるのを感じながら担当者に声をかけた。
「田中さん。この度は大変しつ…」

不思議な事が起こった。

見えるのである。「それ」は田中のそばを漂っている。
混乱しながらも反射的にそれを読み上げた。

「…あれ。最近痩せられました?いやむしろガッチリされたような。」
不機嫌な表情の田中が驚きの後、破顔した。
「お、分かるかい。実は最近筋トレにハマってだな。」
余程嬉しかったのか様々なトレーニングについて力説された。
返す言葉に困ると現れる「それ」を読み上げる事で
会話が円滑に進んだ。

以降、困ると「それ」は現れるようになった。
SF
公開:20/06/13 18:19
更新:20/07/07 00:09

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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