絶滅飼育員

全国の飼育員が絶滅寸前だ。

理由は単純。

動物たちと信頼関係を
築くためのコミュニケーション能力がこれまで以上に必要となったからだ。

具体的には
キリン語、ゾウ語、ゴリラ語、
ライオン語などなど、各動物語を理解する能力。

だからなのか、
将来なりたい夢で
飼育員を目指す子供たちは減った。

あるいは、
余程の動物好きだったとしても
採用試験に受かってからの研修で
殆どの新人はリタイアしてしまう。

動物園の宿舎で行われる、
特別な研修だ。

一体、どんな研修かって？

ためしにゾウ語の授業を見学してみよう。

「はい、じゃあ次の台詞を
ゾウになった気持ちで訳して。
『パオ、パオパオ、パパパオーン』」

「えっと……。お腹空いた、ですか？」

「ちがうぞ！『暑くなってきたから、水風呂に入れてくれ』だ」

毎年、動物園の宿舎から
研修生が一斉に脱走するのは
もはや見慣れた光景である。