美女の失くしモノ

3
4

「それで、最後にそれを見たのはいつですか?」
失せモノ探しの私の元に箱を抱えてやって来たのは、目の覚めるような美女だった。
「一度は箱の中に確かに在ったのです。それが二度目に開けた時に失くしてしまって…」
どんな男でも籠絡出来そうな、魅惑的な瞳に泪を浮かべる。
探し出すためにいくつかの質問をする。彼女の探しているものの正体が分かるにつれ、失ってしまった狼狽振りもよく分かる。
「しかしですね。私は貴女がそれを開けてくれて良かったと思いますよ。」
箱を膝に抱えたまま、彼女が顔を上げる。
「それは貴女の箱だけに留めておくべきものではない。人々皆が自分で探し、掴み、また失い、探し求める。そう在るべきものです。もう一度それを探し出すのは私ではない。貴女自身、ですよ。」

彼女が帰った後、置き去りにされた箱を眺める。
そこには、彼女の名前が刻まれていた。
「Pandora」と。
ファンタジー
公開:20/06/13 11:35

とこたコト( 愛媛県 )

物書き初心者です。一つずつ勉強していきます。
しばらくぶりでございました!この頃ずっと余裕が無い日々を送っておりましたが、どうにかこうにか戻って来ました(^_^;)
まだもう少しカメさん歩きになりそうですが、またまた頑張ります!
駄文ですが、どうぞ宜しくお願いします。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容