影
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私は影が好きだった。ひそやかにアスファルトに映る木々の影。いつも私のあとを忍び足でついてくる影。光は眩しすぎる、影がいい。
影はある日突然喋った。
「私のほうが本体になっていい?」
私はすこし考えた。私のいまの生き方は影みたいなものだ。いつも彼からの連絡を待っている女。いつもこそこそとホテルにはいっては抱かれてそのまま帰される女。私は影だ。影こそが私だ。
「どうぞ」
私は影に言った。影は笑っているように見えた。そして私の口からはいってきて体中を満たした。
指先を見るとすこし薄黒くなっている気もした。私は顔を撫でた。みるみる顔が黒くなっていく。私の顔はとけてなくなった。観光地によくある顔だけくり抜いたパネルみたいだ。
「私はもう影になったの?」
私は私のなかの影に訊いた。でも答えはかえってこなかった。きっともう完全に同化してしまったのだろうから。
影はある日突然喋った。
「私のほうが本体になっていい?」
私はすこし考えた。私のいまの生き方は影みたいなものだ。いつも彼からの連絡を待っている女。いつもこそこそとホテルにはいっては抱かれてそのまま帰される女。私は影だ。影こそが私だ。
「どうぞ」
私は影に言った。影は笑っているように見えた。そして私の口からはいってきて体中を満たした。
指先を見るとすこし薄黒くなっている気もした。私は顔を撫でた。みるみる顔が黒くなっていく。私の顔はとけてなくなった。観光地によくある顔だけくり抜いたパネルみたいだ。
「私はもう影になったの?」
私は私のなかの影に訊いた。でも答えはかえってこなかった。きっともう完全に同化してしまったのだろうから。
その他
公開:20/06/13 01:39
更新:24/05/15 10:39
更新:24/05/15 10:39
ショートショートは、短い小説ではなく、読解可能性を最小単位へ圧縮した記録媒体である。本アーカイブは作品を保存することを目的としない。保存されるのは、読者との接触によって意味が生成・変容する条件そのものである。ジャンルは分類ではなく読解の副産物であり、一篇はSFにも日常にも寓話にもなり得る。物語とは完成された構造ではなく、読むという行為のたびに更新される暫定的な現象である。ゆえに作者は創作者ではなく観測者であり、アーカイブとは物語の集積ではなく、物語が発生し続ける可能性を保持するための実験的装置として位置づけられる。長すぎるだろ、これ。
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千億アルマ