染好花火

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 真夜中。携帯にメールが届く。
 “ねぇ、花火しない?”


 指定された川原に着くと、君が「こっちこっち」と、僕を手招いた。

 君の隣に座る。同じタイミングで、線香花火に手を伸ばす。君はふふっと楽しそうに笑った。そして、急に真面目な顔をして言った。
 「ねぇ、勝負しようか」






 線香花火の音が夜に溶けていく。





 
 「……好きだよ」
 君のアルトの声が夜に響く。
 「え?」
 ポトリ。落ちた。


 「これね、実は、“染好花火”って言うの。一緒に、“染好花火”をすると、好きって気持ちで相手を染められるらしくてね、だから恋が叶うかもって言われてて…どうかな、染まったりしないかな…」
 ポトリ。君の“染好花火”が落ちる。
 “ピンク色”の火の玉。
 それと同じ色した、君の頬。


 「もう、とっくに染められてる」

 そっと、君の手を取って。
 君は僕の腕のなか。
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公開:20/06/13 00:14
更新:20/12/22 16:07
染好花火 と書いて せんこうはなび

すみれ( どこか。 )

書くこと、読むことが大好きな社会人3年生。
青空に浮かぶ白い雲のように、のんびり紡いでいます。
・プチコン「新生活」 優秀賞『また、ふたりで』
・ショートショートコンテスト「節目」 入賞『涯灯』



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