運命の赤いパスタ

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「今日、春ちゃん来るからケーキ買ってきて」
 母さんに叩き起こされた。
「はあ? 春ちゃんって誰だし」
「ほら、いとこの春ちゃんよ。あんた小さい頃よく遊んでたじゃない。可愛くてお人形さんみたいな」
 全く思い出せなかった。彼女いない歴17年。春ちゃんとやらが今も可愛けりゃいいのにと思いながら買い物を済ませた。帰り道、見慣れぬ古い店を見つけた。中には老婆がいて鍋をぐつぐつ煮ていた。
「いらっしゃい。運命の人をお探しかい? この熱々のパスタを小指に巻いてごらん」
 金を払い、言われるままにパスタを小指に巻くと俺の体はすごい力で引っ張られた。
「わっ」
 色んな女の子の横をすり抜けていく。俺の運命の彼女はどこにいるんだ。このまま行くと、俺の家。まさかいとこの春ちゃんが俺の運命の人なのか?
「あら翔ちゃん、お久しぶり。会えて嬉しいわ」
 俺の小指のパスタは春彦兄さんの小指にがっちりと繋がっていた。
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公開:20/06/11 13:35

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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