だから……そういう事なのか?

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並木道の桜に実が付いていた。
「小さいサクランボだ」
指さして振り返れば、三歩後ろにいる。大昔の奥さんの距離だぞ君。
「確か、自家不和合性とやらではなかったか?」
桜は自家受粉出来ない。教えてくれたのは君だった。特にソメイヨシノは大半がクローンで、何本あっても無理だと聞いた。
「他家受粉は可能だ。別種との交配だろう」
そう言えば、近所に違う桜もあった。足を緩めて追い付くのを待つ。
サクランボ(チェリー)と言えば……。白衣の間に横目をやる。乙女にははしたない質問だ。
「経験はない」
「えっ!?」
頭上の赤い実を、ひょいと口へ。途端、渋い顔になった。
「……これで僕も経験者だ」
完全に意味が違う。
「良かったな」
「ああ。貴方と一緒だ」
君。それは『殺し文句』だぞ。泣きたいのは山々だが今更だ。
満足そうに頷く君が、絶好調に可愛いのだ。
手を差し出す。素直に繋ぐ。
こら。握手ではないぞ、君……。
青春
公開:20/06/11 11:31
今はこれが精一杯。 二人の距離は、まだ遠い…(笑)

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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