てるてるソース

私の悲しい記憶は美味しい記憶と結びついている。
悲しい事があった時、母は揚げ物を作ってくれた。
「てるてるソースてるソース、あーの子元気にしておくれー」
そんな歌と共にてるてるソースたっぷりの揚げ物を出してくれる。
カラッとした揚げ物によく合うソースはいつも私の心の雨を止ませてくれた。

失恋を知った。悲しくて悲しくて、てるてるソースたっぷりの揚げ物を食べても心の雨は止む事がなかった。
雨期の訪れは心にもあるんだ…なんて思った。
泣いて泣いて、涙が枯れ果てる頃には何を食べても感動しなくなった。私の心に乾期が訪れた。
母はそれでも私にてるてるソースを使った料理を毎日出してきた。瑞々しいサラダにもてるてるソースはよく合い、私は少しずつ元気を取り戻した。

私は辛い事があると、まず食べる。てるてるソースたっぷりの料理をお腹いっぱい食べる。
「てるてるソースてるソース、あーたし元気にしておくれー」