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蔵の掃除をしていると古びた腹話術人形を見つけた。
懐かしい…祖父が昔、これを使ってよく腹話術を披露してくれた。この人形、口が悪くて大嫌いだった。今となってはそれもいい思い出だ。
腹話術人形を手に取ってみた。『古いけどまだ壊れてないみたい』
驚いて人形から手を離した。今の何?空耳?
違う。この人形から私の声がした。
恐る恐るもう一度人形を手に取る。『人形が喋るはずがない』
手を離す。間違いない。この人形、私の心を代弁している。
私はそんな人形に恐怖を覚える反面、ある事を思いついた。
高齢故に病院で今も眠り続ける祖父。その祖父の本心がこの人形を通じて聞けるかもしれない。
腹黒な言葉でもいい。私は家族を集め、病院へと向かった。
『儂の最後に皆が集まるなんて人生捨てたもんじゃないな。ありがとう』
祖父はそっと旅立った。
人形の言葉を誰も空耳とは思わなかった。だって祖父は最後に笑っていたのだから。
公開:20/06/11 18:47

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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