空耳

美術部で部長をしてる彼は寡黙で不愛想…なんて、皆に思われている。私からすれば彼ほどおしゃべりで感情豊かな人も珍しいと思う。
彼は花の絵を好んで描いた。出会った頃、アマリリスの絵ばかり描いていたので気になった。
園芸部部長の私はアマリリスの花言葉を調べてみた。
『おしゃべり』とあったので、彼に話しかけてみると花の様に真っ赤になって面白かった。
私をモデルに絵を描いて、と言ったら彼は私の周りを多くの花で彩った。
『秘めた恋』『特別な存在』『幸福を告げる』『特別な人』
描かれた花の花言葉は私への熱烈な告白と化していた。
彼の声は小さく、空耳かな？と思う事も多い。
しかし、絵から伝わる彼の声は凄く大きく、分かる人が見れば彼の心の内が丸裸になっている。
私は今日も、そんな彼の言葉に存在しない耳、空耳を傾ける。
聞こえなくても、ちゃんと伝わっているよ。
私はそんな彼に向日葵を差し出した。